動物病院で働いて

臨床8年目の獣医師の日々

猫の咬み傷で苦しむベテラン看護師

同僚のベテラン看護師が、1週間前の猫の咬み傷で苦しんでいる。この猫は病院に来ると狂暴になるので、他院では獣医師が触ることもできない。

僕が働いている病院でも怒るには怒るが、しずかになだめながら、そっとそっと接していれば、それなりに猫を触ることはできる。1週間前の診察ではほぼ最後まで怒らせずに身体検査までできた。

その最後の最後、こちらの油断もあったろう、それまでじーっとしていた猫が口を開き、看護師の指に咬みついた。

その傷は爪に突きささり、看護師の指は変色して、ぱんぱんにはれあがった。痛みで十分に眠れない。仕方がないので外科を受診、医師は太い針で傷口に孔をあけ、膿を絞り出した。絞り出すが、なかなか出てこないので、ぎゅーっと力を込めてもっと絞ろうとする。激痛と脂汗。

それでも一向に化膿と激痛は改善しない。爪も変色したまま。昨日はメスで傷口を切りひらき、点滴で抗生物質を投与。より作用が強い痛み止めに変え、昨夜はやっと眠れるようになったそうで、上記の話をしながら、その看護師はとほほな表情をみせていました。

 どの仕事でもそうでしょうが、けがをすることは一番避けなければならないことです。仕事のパフォーマンスがさがる。なにより、動物病院のスタッフが動物に咬まれたり、ひっかかれたりするのは、私たちが動物の性格・行動・ハンドリングに熟知していないことを証明することであって、はずかしいことなのです。

まあ、そんなことよりも、だれだって痛いのは嫌ですから、怪我には重々気をつけているつもりではあります。怪我をした直後は「やっぱり油断してはいけないな」と反省するのですが、のどもとすぎれば・・・のように、時間がたてば、また油断する瞬間がやって来る。

 僕が最後に怪我をしたのは、猫のキックだっただろうか。猫のキックによる引っかき傷は、結構あとに残る。肌のきれいな看護師の腕に、長い傷が10cmも残っているのをみるのは気の毒なものです。

 ベテラン看護師は労災申請するのだろうか。職場でそういう申請をしたスタッフをみたことがない。そういう間違った「文化」も少しずつ改めないと、動物病院の労働環境は悪いままだろうとおもう。